新しいアルツハイマー型認知症薬について
昨年、アルツハイマー型認知症に対する新たな薬が承認されました。エーザイという製薬会社から発売されたレケンビという薬です。2023年12月から発売開始となっており、ごく一部の医療機関では投与開始になっている様です。
レケンビはアルツハイマー型認知症に適応になっており、レビー小体型認知症・脳血管性認知症・前頭側頭型認知症などその他の認知症には適応になっておりません。レケンビはアルツハイマー型認知症の原因の一つであるAβ(アミロイドベータ)を脳に沈着しにくくさせ、認知症の進行を抑制させるからです。そのため、レケンビの投与開始にあたって、アルツハイマー型認知症であるかどうかの診断が厳格に行われます。現在、当院でおこなっている認知症検査は、頭部MRI、認知機能テスト、採血により認知症のタイプを推定しています。確定診断ではないため、当院でアルツハイマー型認知症の可能性が高いと診断されただけではレケンビの投与対象とはなりません。アルツハイマー型認知症の確定診断のためにはアミロイドPETや腰椎穿刺をおこない、脳にアミロイドが沈着していると判断しなくてはいけません。この検査は、当院では行なっておらず、僕が知る限りでは近隣で投与のためにご紹介できる施設はありません。今後、当院でレケンビ投与のための検査や、実際に投与ができる様になる可能性は今のところありません。
また、レケンビは認知症症状が進行した方の適応はありません。当院でも行なっているMMSEという認知機能テストで22点以上の軽度認知機能障害の方が対象です(実際、投与対象になるかどうかの認知機能テストは違うものを行います)。
レケンビの投与は2週間に1回 1時間の点滴で行われます。脳梗塞や脳出血を引き起こす可能性があることから、定期的に頭部MRI検査を行います。
実際の効果についてですが、CDRという認知機能評価テストでレケンビ投与群18ヶ月後の点数と偽薬投与群の12ヶ月後の点数がほぼ同等であったとのことです。18ヶ月の投与で半年分認知機能の低下を遅らせることができるということでしょうか。あくまで、認知機能を改善させたり、止めたりする薬ではないということです。
今後、情報が入り次第ご案内させていただきますが、まずはここまで。
ところで、昨年末にKyoto Great Roundというトレイルランニングのレースに参加してきました。滋賀県の大津を出発し京都の街の周りをぐるっと回る130kmのレースです。一昨年も参加しました。この時は比叡山に雪が積もっている中を走ったのですが、昨年は暖冬だったせいか雪がなく、昼間は半袖で走ることもありました。さすがに夜は寒く重装備にはなりましたが、天気が良い中を27時間半で無事に走ることができました。今年は秋にUTMBというフランスのモンブランで開催される世界で最も有名なトレイルランニングレースに参加することになりました。160kmのレースなので健康に気をつけながら頑張りたいと思います。